アメリカの書店ではどこのセクションにも並ぶ。
Idiot’s guide(物わかりのわるい人向けのガイド)シリーズの音楽理論についての本。
これはサンディエゴ時代、学外演奏の予定がなく学校に一学期まるまる滞在できたことがあり、嘱託演奏員から外してもらい、一般教養の音楽入門の授業を受け持った時に買った。
実際は授業のために分厚いテキストがあり、まったくこの本を開くことがなかったが、久々に目を通してみた。
よく説明がついており、たまにくどいくらいだが、やっぱりアメリカ人向け。
日本のそれと違い、習慣化させ体得し自分のものにするのではなく、出来るだけ説明で話しを展開し、どうしようもない所は覚えさせる。
例えば、ト音記号の読み方では、五線の間のそれぞれ音は下からFACE(ファ・ラ・ド・ミ)。五線の各線の上の音は下からEGBDF(ミ・ソ・シ・レ・ファ)だから”Every Good Boy Does Fine.”という語呂合わせ。
別にこの本の著者の思いつきというわけではなく、以前にも聞いたことがあるからアメリカでは一般的らしい。日本だったら一目でわかるまで読み慣れる訓練をするところだろう。
またサンディエゴで教えていた音楽の授業に戻るが、教授の下のアシスタントとして、講義に平行する形でセクション(補足授業)を持っていた。同じ授業で私ともう一つセクションがあり、リズムや書き取り、理論に関してはうちのセクションが優勢でありつつ、負けたのは音程歌唱だった。
これは、音をひとつ与えられてから言われた音程をそこから作るもの。最初の音が必ずドというわけでもなく、時に黒鍵からのスタートであったり、上につくるか下に作るかもテストの場にならないとわからないから、結構むずかしい。
結局、私は、5度までの音程を徹底的に練習させて、それに足したり引いたり展開させたりして音程を歌わせるよう仕込んだ。
一方、もう一人のアシスタントはアメリカで育ったので、アメリカ式に行った。それは、この本にも載っているが、なじみ深い歌に出てくる音程を利用するもの。
たとえば上行の長2度なら、ハッピーバースデイの歌の”はっぴ・ばーすでい”の節の’ぴ’と’ば’から。オクターブなら”オーバーザレインボウ”の冒頭、”さむ・うぇあー”の二音など、、。ひとつひとつ歌いながら覚える。そして与えられた音からその一節を当てはめ、音程をつくる。
ここに挙げたのは、あえて日本人でも馴染みのあるものだが、音程を覚える歌の例は五万とあれど、アメリカで生まれ育たなかった私には歌詞はおろか題名さえ知らないものが多く、手に負えず、別の方法で教えた。
負けん気は強いので、その時は必死だったが、今思い返すと面白い教育文化の違いである。
もし、アメリカ人向けの音楽入門書であるこの本(やこの手の本)でアメリカ留学のための準備を始める人がいたとしても、ちょっと日本人には回り道になってしまう気もするので、自分なりに消化してほしい。